(その7よりつづく)
ダイアログ・イン・ザ・ダーク「対話のある家」は、完全に光が閉ざされた純度100%の暗闇の中で、視覚障害者の方のアテンドによってその時参加された方々とチームになって家庭的な対話を行うエンターテイメントです。完全な暗闇なので、視覚以外の感覚器しか使えません。聴覚、嗅覚、皮膚感覚、体感覚を使って、状況を判断して会話を楽しむというものです。
こんな体験ができるところはないので、視覚が使えない環境を知りたかったことと、閉所(暗所)恐怖症の寛解のためにぜひ参加してみようと思いました。それですぐに申し込みをしました。当日まで、大丈夫かな?と少し不安がありましたが、それまでの自己プログラムによって暗さに対する認知が変化したので、大丈夫だと言い聞かせて当日を迎えました。
大阪のグランフロントにある会場に行くまで、歩きながら不思議な気持ちになったことを覚えています。視覚障害者の方がご案内くださるのですが、暗闇という同じ条件で参加される方々とうまくコミニュケーションが取れるのか?不安になって途中で出たくなってしまったらどうしよう?でも興味があるので楽しみ!というようなアンビバレントな気持ちが出てきたのです。
と考えているうちに到着し、受付を終わらせて参加者の皆さんとご一緒になりました。計3組の参加者の方々がおられました。私たちのほか、関西の大学の50代くらいの男性教授さん、お母さんと小学生の子どもさん2人でした。大学の先生は、自分は閉所恐怖症なので、ここでなんとか治したいと私に話しかけてこられました。私も閉所恐怖症なんです。とお答えすると、一緒に頑張りましょう!と一体感が高まりました。
もう一組のご家族さんは、子どもに視覚障害の方への理解を深めるために参加したと仰ってました。素晴らしい方々との出会いで、安心感が高まりました。そして、エンターテイメントが始まりました。まず、光のついた部屋に案内されました。
そこは、完全な暗闇の部屋に入る前に光量を徐々に落としていく調整の空間でした。だんだん暗くなるので、少し不安になりましたが大丈夫と自分に言い聞かせていました。すると、ここで男性の方が怖くて限界と言われて出ていかれてしまいました。心が一瞬振れましたが、不思議と大丈夫でした。
その後、案内されて完全な暗闇の部屋に通されました。そこで、(ネタバラシになってはいけないので、詳しくは書きませんが)2人のアテンドの方の声に導かれて、遊んだり、会話を楽しんだりしました。何も見えないはずなのに、その部屋が見えるような気がしました。完全な暗闇の世界でも、全く怖くなく、視覚が使えない分、集中してお話を聞くことができました。特に驚いたのは、参加者の方とアテンドの方とのコミュニケーションがより円滑になり、他者との共感性が深まったことでした。私の場合は、閉所恐怖症というものを抱えての参加だったこともあり、不思議な喜びを感じる事ができました。
このエンターテイメントに参加した後は、暗い中でも単調な音がしても、パニックが起こらなくなりました。特に狭くて暗い部屋でも通常の範囲内での心の動きでおさまります。そしてその時は、頭の中にその真っ暗な部屋で活動した時の情景(不思議ですが)が浮かんでくるのです。加えてアテンドしてくださった方のお顔(明るいところでお会いできた)が思い出されて、安心感が出てくるのです。
このように、閉所恐怖症の要因を理解して、暴露法や認知行動療法などをうまく活用して、少しずつ恐怖に心身を慣らして行きました。恐怖の段階を理解して、そこに少しずつ立ち向かっていくことで、徐々にパニックが起こらなくなりました。やはり、恐怖に対する認知が逆さまに書き換わると安定していきました。
そして、最後にダイアログ・イン・ザ・ダーク「対話のある家」に出会えた事が寛解の決定打になりました。素晴らしいソーシャル・エンターテイメントのご提供に心から感謝しています(大阪は閉館になったのが残念です)。
私のやり方が正しいわけではありませんが、皆さまのご参考になれば嬉しく存じます。
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