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言葉の意味のずれ

クライアントさんと面接をしていると、会話がずれていくことが多くあります。全くかみ合わないレベルから、少しずれるレベルまでいろいろありますね。


例えば昔、ある発達に課題をお持ちのクライアントさんから、夜間の騒音で困っていて腹が立ってイライラします。このマンションは引っ越したばかりなので、騒音の主に引っ越してもらいたい。または訴えて騒音をやめさせたい。とお怒りの相談がありました。


確かにそんなにひどいなら、対応策を一緒に考えていかなければなりません。発達に課題のある方なので騒音は生活上、大変な苦しみになることは理解できるところです。しかし、お話しを聞いていると少し話に違和感を感じたので細かく内容を確認しようと思い、質問を重ねていきました。

 

「具体的な内容について教えてもらえますか。」と尋ねると「1か月前くらいからマンションで夜間に大きな歌声が聞こえるようになりました。昼間ならまだしも夜間なので、やめさせるために訴えたいと考えています。」と話されます。「夜間に大きな歌声が聞こえるのは具体的にには何時くらいですか。」と尋ねると、「18時くらいです。」と答えてくれました。


ここで私の生活上の夜間イメージと少しずれましたので、「〇〇さんは、夜間というのはどういう意味で使っていますか。」と質問を重ねると「日没から日の出までです。」という答えが返ってきました。これは確かに間違いではありません。彼の勉強した道路交通法でもそう定められています。「では、大きな歌声は何時間続いたのですか」と聞くと「30分くらいです。」「それが不満なのですね。」「1か月も続いていて気分が悪いので、録音もしたので訴えます。」という態度でした。かなりお怒りなのですが、皆さんはいかが感じられるでしょうか。もしこのような方から夜間に…などという苦情が来たら、どう対応していいかわからなくなりますね。

 

言葉には多義性がありますし、個々人の価値観の違いからもこのような問題が派生してしまうことがあります。コンサルでは不満や怒りについての相談も多いのですが、よくお話を聞いていると言葉の意味の捉え方から行き違いや対立上の問題となってしまうこともあるのです。クレーマーと勘違いされますね。

 

このような時は、本人が夜間という言葉に怒りのポイントがあるのでそこの理解共有を進めます。「お昼間なら大丈夫な音なのですか。」と聞くと「お昼なら生活音の範囲なので気になりません。」と答えてくれました。そこで、まず環境上の夜間という言葉を確認するために、環境省のホームページを一緒に開くことにしました。そうすると環境基本法に夜間の定義が決められていました。


騒音に係る環境基準についてでは、夜間を午後10時から翌日の午前6時までとする。とされていました。彼は、この法律の規定を見てびっくりしました。夜間という意味は法律の違いによって違うのですか。今回は環境の騒音ですから、このルールで判断すべきですよね。自分は、てっきり夜間だと思っていたので、腹が立っていましたが、自分の方が間違っていたのですね。という反応に代わりました。

 

音量もついでに確認させてもらいました。環境基本法では、夜間は45デシベル以下というように決められているので、かなり静かです。大声と言われる録音の音を聴かせてもらいましたが、少し聞こえる程度です。しかし、10分も音は続いていませんでした。夜間には全くないこともわかりました。お怒りだった彼もすっかり落ち着いてきました。あと、言葉は、生活の背景などでニュアンスが異なることも説明しました。本人は納得されて色々調べてみるとのことでした。


その後、不思議と音が全く気にならなくなり、自分も日没後は、できるだけ静かにしていたのですが、洗い物などもできるようになりました。との報告がきました。訴えますか?と尋ねるとそんなことはできません。お互い様ですから。とびっくりするような言葉が返ってきたので、安心した次第です。このような視点からもズレた時に見てあげてください。


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