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夫婦の協力の大切さ

発達に課題のあるお子さまを育てていくことは、人生が深くなりますが、我慢しなければならないことも増えます。私もしたい仕事をお断りせざるを得なかったり、家族もどのように育てたらいいのかわからないので、無駄に時間が取られます。ですので、ほぼ毎日悪戦苦闘しながら、常にこれで良かったのかと自問自答の連続になっていました。  

とにかく、わからないことの連続で、多くの方のお力をお借りして、なんとか生活と子育てを両立させることができました。しかし、今でも大きく後悔している事があります。それは、夫婦での養育、教育方針が合わなかったことです。まだ若いので未熟だったこともありますが、もっとよく話し合って、同じ方向へ方針を持っていければ良かったと思います。特に、問題行動への対応の姿勢が正反対になる事が多く、子どもの規範意識が結果的に混乱してしまったのです。

息子の問題行動が発生すると、第一に対応するのは母親になります。そこで母親の指導が行われるのですが、日常の病院通いや養育で心身が疲れていることもあって、場当たり的な対応になりやすくなります。厳しく怒ることもあれば、放任する場合もあったり、物で代替するなどして、一貫性にかける対応が増えました。

それが続くと、子ども自体も規範意識が不安定になり、混乱して問題行動が余計に多発したり、より大きな問題へとつながります。私が対応する時は、先に母親の指導が入っているので、それを否定できないので、余計に指導が難しくなってしまうのです。

場当たり的なので、ルールがその時によって変わり、発達に課題のある息子はルールを軽視するようになります。規範意識が歪んできますので、当然思考もバイアスがひどくなります。そしてそのうち問題行動を学校などで起こすと、次第に過剰な人権意識が出るようになりました。

特に人権という概念が普通の子供さん以上に偏って学習され、思考のバイアスが強くなってきます。被害者の視点に立ったり、指導すると人権侵害だ!などというクレーマー的な言動が増えていきました。その度にきちんと説明しますが、人権という言葉を出すと先生が引いたり、自分の欲望が通ったりすることもあり、味をしめて乱用し始めました。これが厄介でしたね。現在は、社会的に本人なりに社会人としての自覚ができてきたので、なくなりましたが当時は大変でした。

あの時代に、夫婦で問題行動が起こった時の指導法を共有しておけばよかったと今でも反省しています。方向が定まらないため、子どもが混乱し行動が安定せず無駄な時間を過ごさせてしまいました。そのために社会適応が遅れました。特に後悔しているのは問題を起こした時に脅し的な対応がなされていた事実を知らなかったことです。例えば、「こんど同じ事したら、家から追い出すよ」とか「そんなことばかりしていたら、そのゲーム機捨てるよ」という対応です。脅し的な対応は、子どもの発達課題や健全な考え方を歪めてしまいます。

例えば大人が宣言した限りは、同じ失敗をしたら本当にゲーム機を捨てるべきなのに捨てないので、約束(ルール)を破っても大したことはないという歪んだ考え方になります。これが繰り返されると犯罪者思考へと繋がって、思春期以降からとくに修正が難しくなり、やがて成功体験から人の物を盗んでも罪悪感が強まらない傾向が高まります。

幸い、窃盗などはありませんでしたが、それでも対人関係や親への反発はなかなかでしたね。情けないですが少年処遇のプロである私でも自分の子どもは大変でした。皆さんのお力をお借りして、なんとか息子本人なりの人生を歩ませていただいています。

ただ、こどもの幼少期に夫婦でもっと協力して、特に問題が起こった時には、同じ方向を共有できていたら、おそらくもっと早く健全な自立へと繋がったと思います。母親の言うことと父親の言うことが同じ方向で協力的であったら、発達に課題があっても不安が減少して、安定した人格形成が早くできたと思います。最終的には私一人で子どもの教育をできる環境になりましたので、息子の混乱がおさまりました。やはり、発達に課題のある子どもさんのご両親は、ここを大切にしていただければ、大変でも幸せな時間が増えると思います。ご参考までに。

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