· 

学生さんたちとの対話が面白い

最近は、中学生、高校生、大学生さんたちとお話しすることが仕事以外でも増えてきました。Z世代といわれる年代の学生さんたちとはジェネレーションギャップがありコミュニケーションは難しいだろうなと思っていました。しかし、案外お話が通じるので驚きました。


まず、彼らはデジタルネイティブなので、デジタルイミグラント(もっと古いアナログネイティブ)の私と違って、情報はインターネットで収集して書籍や新聞などをあまり活用しないようです。学習も講義形式より動画教材などが合っているようで、早送りができるから、見たいとこだけ見れると合理的です。


話をしていても、知らない単語や概念が出てくると、その場でスマホで確認するのは当たり前で、こちらに聞いてくれればいいのにと思いますが、AIの方が良いようです。少しそのスマホを見せてもらうと、専門用語などがとても詳しく分かりやすく説明されています。すごい時代だと思いました。


そういえば20年以上前、まだiPhoneなどのスマホが出る前に文部科学省で当時の最先端の科学者などが集まって未来の教育のあり方を検討する研究会に委員として参加したことがありました。その時の印象に残っているのは、将来子供たちのためにピーターパンの横にいつもいてサポートするティンカーベルのようなデバイスを作るという夢がその会では語られていました。


現在は、本当に学生さんの横にティンカーベルがAIとして存在しているようになっています。あの時の科学者が予言していたことが実現していることにも驚きました。学生さんの様々な相談にAIが乗ってくれる時代なのです。もう、自分の体験や見識しか話せない昭和のジジイは相談という意味では必要ないと思っていました。


また、文部科学省の小学生の国語の教科書も10年以上前から、批判的吟味能力も高められるようなものになっていて、現在の情報社会(情報化社会ではありません)での問題に対応できるような素晴らしい内容になっていました。そのような環境で育ったZ世代と呼ばれる方々は、昔と違って自由に生きていけるので、情報さえ取れれば豊かになれる世代でもあると思っていました。


しかし、実際にお話をしていると、対面でのコミュニケーションに興味津々で、Z世代とされるイメージとは違いました。もっと話を聞きたいという姿勢の方が多くて、びっくりしました。どうやらネットでのさまざまな情報の多さと情報吟味で疲れているようです。対面だと言語だけでなく非言語からの気持ちも伝わってくる感じが心地よいそうです。あと、対面で私のようなお爺ちゃんと話していると包まれるような感じがして、自己肯定感があがり、孤独感も消えて安心ができるそうです。


なぜ安心ができるようになったのかと尋ねました。それは次のような会話のやり取りで意味が理解できて、怒りや不安がきえたそうです。その話は次のようなものでした。


僕は、オールドメディアは偏っていて当てにならないからそこからの情報は信じない。といいます。話を聞いていくと、新聞、週刊誌、テレビ、ラジオなどはオールドなので古いというイメージを持っていました。まあその時点である種のイメージバイアスなのですが、デジタルネイティブの学生さんは、それに気づきません。それでは、オールドメディアを従来のマスメディアとして話してみていいですか?というと同意してくれました。少しバイアスから離れることができました。


次に、マスメディアの対象や視聴者は大衆であることを一緒にAIを使って確認しました。ここで、大衆、公衆、群衆という集団があることもAIで一緒に学びました。そのようなことは知らなかったようです。そのような新しい視点から一緒にネット民というネット空間上の集団は何かをAIに聞いてみました。ネット民は、大衆や公衆のような集団の特性が入り混じっているとの説明がでました。大衆と公衆とはここまで違うのかということが理解できたようです。マスメディアは、基本は大衆をターゲットにしているという理解をしたようです。


次に、彼は今流行りのある種のデモをマスメディアはあまり報道しないのはおかしいと思うという話をしてくれました。だからオールドメディアと言われるのですよ。というので、デモの種類を調べてみようか?と話してみました。早速AIに質問すると、公衆的なデモと群衆的なデモに分けてくれました。群衆という概念が出てきて、大衆とも違うことがわかったようです。群衆的なデモは暴動にも発展することがあることが書かれていて、びっくりしていました。


しかし、公衆的なデモも群衆的なデモも変化することも指摘されていて、考え込んでいました。そのうち、流行りのデモは報道するマスメディアと報道しないマスメディアがいるのは、その判断の違いなのかな?という考えが出たようです。オールドメディアは、それぞれに、それぞれの使命や倫理で動いていることが少し違う方向から理解できて、心が落ち着いたといっていました。  


そうして私のようなアナログの爺さんとAIも交えて対話するのが楽しかったと言ってくれました。若い学生さんは、このような見方を変えたお話はとても興味があるようで、その後も、どんどん歴史的、時事的なことを質問してきました。とても楽しそうでしたし、私も若い人の柔軟性やZ世代と言われる年代の子どもたちの心の豊かさを感じて、とても楽しかったです。他の学生さんたちも同じような素直さや倫理観がありました。やはり若い人は素晴らしいですね。心が洗われました。


一方で感じたのは、彼らは情報がありすぎて、何を信じたら良いのか混乱しているところもあるのだと感じました。批判的吟味能力だけでは、情報社会では疲れるのだなとも思いました。論理的な思考力と情報のリテラシー、コミュニケーション能力、問題解決能力、創造性•柔軟性なども合わせてこの情報社会では必要なのかもしれないと改めて感じました。良い時代ですが、大変な時代かもしれません。私の育った昭和ののんびりした社会の方が楽だったかもしれませんね。