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恥ずかしいという気持ちがあまりないので、困っています

保護者の方から、もう成人にもなるのに変わったかっこをして街を歩いたり、食事中にげっぷやおならをしても平気。体臭や口臭などの自分の身体的な清潔さに無得着。恥ずかしいということが分からない。どうして恥ずかしくないのか理解できないし、何度いってもわからないので、どうしたらいいのか悩んでいるという相談は昔から多いです。

 

特に、家族のプライベートな話を他人に何の断りもなく全部しゃべったり、ルールやマナー違反を理解できず、家族や友人たちが恥ずかしい思いをすることもあるので、一緒に行動するときはひやひやしていてストレスになる。という社会的な問題まで悩んでおられることも多いですね。

 

中には、公園のジャングルジムで小学校1年生の娘さんが遊んでいて、通りかかったお母さんがスカートだからジャングルジムで遊んだらダメ。パンツが見えるからね。と注意したそうです。ところが「お母さん大丈夫。パンツはスカートのポケットに入れているから!」とジャングルジムにまた登ろうとして、お母さんがそのまま連行して帰った。というお話をため息をつかれながら聞かせていただいたこともありました。

 

なぜ、恥ずかしいという気持ちが起こらないか?ということですが、いろいろなパターンがありますので、大きくふたつに分けてご説明したいと思います。ひとつは環境の問題。もうひとつは個人的な能力の問題に分けることができます。

 

恥ずかしいという気持ちは、基本的には社会的な相互作用の積み重ねの中から学習されていきます。幼少期からのいろんな人との交わりの中で、マナーや文化として学習されていきます。特に幼少期から他人の表情や反応をみて、自分と他者との違いを学んだり、自分の行動が他人に影響を与えることを学びます。そのような経験の積み重ねから、社会性が発達してきます。他人との関係の取り方などから、社会のルールや規範などを学び、自分の行動が他者からどのように評価されるのかを意識し始めてから社会性と規範性がわかり出します。

 

そしてその頃から、罪悪感と恥の感情が違うことがわかり出してきます。罪悪感は、自分の行動が悪い結果をもたらした時に生ずる感情です。恥の感情は、自分の行動が他者から否定された時に生ずる感情ですね。特に学童期には、自分への評価がより明確化しますから、自分の外見や能力を他者と比較するようになり、他人の評価を気にするようになって恥ずかしいという感情がより明確化してきます。

 

この時期に、養育者などから肯定的な関わりや愛情がたっぷりあると、恥についても発達が促されます。良い環境から、健全な恥ずかしいという気持ちが育まれていきます。また、文化的な環境からも恥の感情は育まれます。集団主義的な文化では、個人の行動がグループ全体の評価に影響を与えるとされることが多いので、恥を感じやすくなります。

 

このように、恥ずかしいという気持ちは、子どもの発達と親子関係などの社会関係から健全に育まれていきます。ところが、親子の関係が希薄であったり、幼稚園や小学校などの社会に参加できないと、社会的相互作用が減少して学習が不足し、恥の感情が健全に育まれず、上記で紹介したような問題が派生しやすくなります。健全な養育環境が重要な事が理解できると思います。

 

さて、次の個人の能力の問題ですが、発達に課題のある方は、恥の感情形成がされにくいことが分かります。発達障害とされるのは、まさにこのような幼児期からの発達課題の積み残しが認められるからです。社会性の問題は、社会的相互作用の機能不全から起こります。社会的な相互作用は喜びや悲しみ、怒りなどの感情を共有して他者とのつながりを深めていきます。そして、社会的な規範や役割を学んでいくのですが、発達に課題のある方はこれが難しいことも多いので、罪悪感や恥の感情が育まれにくくなりますね。

 

特に、発達に課題のある方は、幼児期に人の表情や反応を見て学んでいくレベルのところからつまづいていることが多いです。これは、視覚認知能力の問題が背後に隠れていることが多いのです。人の表情や反応を正確に読み取れず、社会性の発達にマイナスの影響を及ぼします。要するに、人の表情などがきちんと見えていなくて認識できないのです。

 

ですので、他者からの評価などが分かりにくく、規範性や社会性がうまく獲得できずに、罪悪感や恥の感情が育まれにくくなるのです。視覚認知能力に課題がある方や相貌失認とされる方々は、特にこの傾向が強く、認知リフレーミング技術で視覚認知能力が改善しても直ぐには恥の感情は生まれません。グループワークなどを通して、学び直しをしていかないと難しいのが実際です。

 

恥ずかしいという気持ちが育ってないと、社会ではビジネスや対人関係、社会的信用上の大きな問題につながることもありますので、健全な恥の感情を持てるように指導することも大切ですね。もし、恥の問題でお困りの方はお気軽にご相談ください。

 

 

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