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障害児の親としてどうしたらいいの?との戦いと技術開発 その4

(その3からつづく)
その後、息子の学年が上がるにつれて、勉強から社会性まで、さまざまな問題が積み上がってきました。漢字もなかなか書けない覚えれないし、作文がかけない。算数は、九九はなんとか覚えれたものの、計算は暗記しているだけ。数の基礎的な概念や領域数、連続数がなかなか理解できない。図形などは、線があるくらいにしか認識できないのでした。

1年生の時は、家で予習や補習をすれば、少し遅れる程度まではフォローできたのですが、だんだん難しくなってくると、学習時間はかかりますし、解けなくなる問題が増えて、どんどん本人の動機ややる気、自尊心が低下していきました。さまざまな学習法を用いても、なかなかお勉強についていけなくなりました。

私の頭の中には線形モデルで一般の子どもさんとの差が広がるグラフが常に出てくるようになりました。少し無理やりですが(目的変数や説明変数、回帰係数が…)私の頭の中には出てきます。簡単に表すと息子の成績に関する単純回帰方程式は、y=ax+bの式が頭にありました。yが将来の成績、aが能力、xは学習時間、bは教育環境とします。このaは平均の方を1とすると息子は0.4くらいになります。学年が上がって学習時間のコストをかけても成績は上昇しにくくなって行きます。そうすると、aの値を改善することができなければ、社会適応ができない。心理テストでのIQ値がこれを示すこともありますが、回帰方程式の方が私の単純な頭にはわかりやすいのです。ですので、将来のことを考えると、とても焦りました。

また、当時私は少年院で学習障害の研究、実践も行っていました。特に初等少年院の中学生などと面接をして、小学生時代の学習関係について教えてもらいました。すると、約9割弱の在院生の方が、息子と同じようなつまづきをしていることがわかりました。当然知能指数は80から100前後ですので、息子よりも能力はかなり高いのです。そこで、現在の弊社の細井社長(当時分類統括、心理の専門家)に学習障害と注意欠陥多動性障害のチェックリストで全少年のデータ収集をしてもらいました。

やはり、学習障害の可能性のある方が80%程度、注意欠陥多動性障害の可能性のある方が90%弱との結果がでました。やはり、学習能力の困難さが浮き彫りになり、知能特性もWISC-3を全少年に実施したところ、視覚や聴覚系の記憶に関するデータがかなり低い傾向の方が多く認められました。フルIQは私の息子よりも高いのですが、下位検査では同じくらいのデータであった方が多くおられたのです。

面接と心理検査のデータや生育史などの社会調査記録、保護者への聞き取りなどを合わせて分析していくと、私の息子と同じような問題を学校などで抱えていたことがわかりました。少年院の子供たちの多くは家庭環境に問題があるので、教育コストがかけられていません。それゆえに、学業不振や学校不適応としてより深い問題へとつながっているのがわかりました。

そのように、子どもたちと息子との関わりの中で、社会適応のためには学習効率と知的能力そのものへの介入プログラムの開発の重要性を再認識するようになりました。単純で申し訳ないのですが、単純回帰方程式のyの値をいかに合理的に高めるかということになり、特にaの値を例えば、ある能力が0.4であれば、1.2くらいに回復させることは可能か?という命題とxの効率性を高めるプログラムの開発を重点に行う戦いに入っていったのです。プログラムを検討する時にはもう少し複雑な非線形モデルを使っていますが、私の頭では、単純回帰方程式のような簡単な方がいいのです。(つづく)