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早期発見、適正介入

最近、5年から8年ほど前にご相談に来られた方々から久しぶりにご連絡をいただくことが増えてきています。以前、ご相談に来られた時は小学生や中学生、高校生だった方々が、その後、他の機関等でさまざまな治療やプログラムを受けられ、なんとか頑張られていたのですが、なぜかうまくいかなかったので、どうにかして欲しいというご相談が主です。

引きこもりや非行、犯罪関係のご相談が多いですね。また、うまく福祉就労のライフコースに乗られた方でも、対人関係や暴力関係の問題を起こし、どこにも行く場が無くなられるケースも結構あります。

このような場合は、現在の問題点やリスクを把握し分析していくのですが、どのような治療やプログラムを受けてこられたかを確認もします。そうすると一定のパターンが見えてきます。例えば、小学生の時に相談に来られた方の中には、母親は発達上の問題を心配されているのですが、父親がこのくらいなら大丈夫だろうという判断をされて、治療やプログラムを先送りされているパターンが散見されます。このような場合は、小学生の高学年から中学生くらいに問題が大きくなり、暴力問題や窃盗等の反社会性、不登校などの非社会性でお悩みになられることが多いです。早期介入をためらって問題が先送りされたパターンといえます。

また一方で、小学生時代から発達の問題に積極的に対応されているがうまくいかなかったというパターンも多いです。その場合は大抵、小学校時代から向精神薬を投薬されているのですが、処方どおりに服用していなかったり、お薬が合っていなくても副作用を放置していたりすることも多いです。

加えて、発達障害のタイプによっては行動療法やカウンセリングが非効果的で問題行動が悪化することを知らずに、頑張って真面目にやりすぎてかえって認知バイアスを強化しているパターンなどもあります。

このような場合は、現在の問題とそれまで行われて来た治療やプログラムを重要視して、コンサルティングを行っていきます。例えば、リスパダール(リスペリドン)を5年ほど投薬されていた高校生が朝の着替えに時間がかかり、制服のボタンを止めるにも何分もかかってしまうなどの問題が出ていました。リスパダールを服用してからそのような傾向が強くなったことがわかりました。保護者さんがこのことを医師に相談されると、医師が投薬を中止されました。すると、翌日の朝から制服がスムーズに着れるようになったとの報告をいただきました。これでひとつの問題を解決することができたわけです。

また、5年前には発達の課題はあったのですが、その時は問題行動はなく、前向きな小学生だった男の子がいました。しかし、中学生になると他人にすぐ喧嘩をふっかけたり、指導されても嫌がらせをやめないことで学校でも問題視されていました。保護者と担任の先生にお話をお聞きする機会がありましたが、養育や教育にはあまり問題がありませんでした。

しかし、情報を収集していくと、別のところで受けている指導等に問題があることがわかりました。本人が嫌がっているのに自己開示させたり、発達特性を無視したカウンセリングを行なっていたり、強権的な説教がおこなわれていたりしました。そこでは、善意で行っている指導がかえって犯罪者思考が形成されるようになってしまっていました。本人も嫌々通っていたので、保護者はそのプログラムを中止され、教師と連携をとって子どもとの信頼関係を再構築されていきました。それだけで、問題行動は減少していきました。こちらも認知リフレーミング技術を提供させていただき、問題は解決して、本人の希望の高校へと進学できました。

彼らの人生行路を考えてみますと、問題の早期発見と適正介入の大切さが見えてきます。問題行動が出ている時は、非効果的な戦略によって問題が解決できないことが多くあります。専門家でも限界があるので、治療やプログラムをやりっぱなしでなく、常にモニターしていくことも重要なのです。ご参考までに。

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