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ライフコースとライフコースケア®とは

ライフコースとは何のことですか。というご質問をいただきました。ライフコースの定義はいろいろありますが、「ライフコースとは。年齢によって区分された生涯期間を通じての道筋であり、人生上の出来事についての時機(timing)、移行期間(duration)、間隔(spacing)、および順序(order)にみられる社会的パターンである(エルダー)」という定義が一般的です。少し難しいですね。要するにライフコースは「人生」ではなく、人がたどる人生の「道筋(pathways)」のことを示します。その道筋には、多くの方がたどる道筋もあれば、少数の人がたどる道筋もあります。社会的に望ましい道筋や望ましくない(非行・犯罪など)の道筋もあります。ある一定の頻度で出現する複数の道筋がライフコースといえます。

 

ライフコースは、歴史的な出来事や社会状況の変化によって、個人の人生に影響を与えます。この出来事がライフコースパターンに影響を与え、同じ世代を生きていても、性別や世代、経済状況によって、ライフコースが大きく異なることを表しています。

 

例えば、学生→就職→結婚→出産→子育て→退職→老後といった典型的なライフコースもあれば、フリーランス、起業、海外移住、離婚、再婚などにより、道筋が多様になることもあります。このように多様なライフコースパターンが発生します。そして、このようなライフコースパターンが高い頻度で再生産されることを「ライフサイクル」といいます。


ライフサイクルは、例えば親と同じような人生パターンをたどれるとか、同じ時代を生きる人が同じパターンをたどれることを示します。日本の高度経済成長期などは、貧しさや地域に関係なく、皆が同じ人生を歩めるような社会、それが豊かであるとされていました。実際1980年代に高校進学率も95%を超えて、中等教育もほぼ全員が受けられるようになりました。このように、若者の人生の機会が保証されるようになり、ある意味で親元で学業の機会を得て社会人となるというライフコースパターンがライフサイクルとなっていったことも指摘されています。

 

しかし現在では、このようなライフサイクルでは説明がつかないほど、多様なライフコースが形成されつつあります。それゆえに、皆さんがイメージする従来の高度成長時代のライフサイクル的な道筋を歩むのは、難しくなってきています。ある意味では多様なライフコースが歩める別の意味での豊かな社会になってきていますが、時代とともにかわりますので、注意が必要です。


また、犯罪学のライフコース論では、面倒見の良い雇い主による仕事を得る事とお互いを認め合う結婚が、望ましくないライフコースから方向転換する事が指摘されています。これは、社会的絆の有効性を証明したものであります。弊社が就労をターゲットにするのは、ライフコース論的な視点を重視しているからです。


加えて、現代社会は就労システムなどが変化して、ライフサイクル的なライフコースパターンは、減少しています。それゆえに、人生設計が複雑化して、自ら望ましいライフコースをどのように歩んでいくかという課題が表面化しています。ですので、ライフコースという視点を皆様に知っていただき、ご自分の考える豊かなライフコースを歩んでいただきたいと願っています。この複雑さを専門的に解決するお手伝いがライフコースケア®︎という視点でもあります。


特に、ライフコースは社会的役割の連続でもあります。役割には、期待と遂行の2つが求められます。そのためにも、認知レベルを高めて社会的役割を円滑にやり遂げていく能力も重要になります。認知リフレーミングは、そのあたりもターゲットにしていますので、ご理解を賜れば嬉しく思います。


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