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視覚的短期記憶が改善すること

薫化舎は、プログラムを実施される方すべてに、心理検査を行っています。知能検査と投影法をプログラムの前後に期間を開けるか、視覚認知変化の測定のために、介入前後で行うなどさまざまな方法で、可視化できるように工夫をしています。今回は、その検査で明らかになる視覚的短期記憶を取り上げてみたいと思います。

視覚的短期記憶(ウェックスラー式知能検査では符号)は、名著「犯罪の原因 グリュック夫妻」で非行少年には優位に低く、問題があるとの指摘がされていました。私も長年データを集めてきましたが、日本でもやはり同じような結果が出ていましたね。ですので視覚的短期記憶を社会適応ニーズのひとつとしてプログラムターゲットにしていました。これが改善すると不適応リスクが減少する可能性が高まるからです。

また、発達に課題のある方にも視覚的短期記憶が弱い方も多く、この問題を無視するわけには行きませんでした。旧帝国大学の教員の方でも論文が書けないと相談に来られる場合は、個人内でも視覚的短期記憶の数値が極端に低いことが多く、お悩みの要因のひとつはここにあることもよく見つかりました。それだけ視覚的短期記憶はニーズになりやすいといえます。

そこで、ここをターゲットにプログラム開発をします。まず情報が心的表象として視覚(その他の感覚器にも同時)に入り、感覚貯蔵として数百ミリ秒から数秒保持されます。そしてその情報が送り込まれ視覚的短期記憶に一時保存されます。その後、リハーサルを得て長期記憶に情報が送られて長期保存されるシステムを利用します。

リハーサルとは、何度も暗唱したり、書いたり再現を繰り返すことです。リハーサルは、情報を短期記憶に維持する「維持リハーサル」と何かの情報と関連づけて覚えやすくする「精緻化リハーサル」の2つに分けられます。特に精緻化リハーサルは、符号化しようと意識をもってリハーサルを繰り返さないと長期記憶に転送されない性質があるとされています。このリハーサルの機能不全が一つのターゲットになります。

なぜ視覚的短期記憶が維持できないか。という問題として捉えると、維持リハーサルが機能しにくいということが指摘できます。その前段階の視覚の感覚貯蔵の問題も無視できません。そこで、まず視覚貯蔵の際の情報入力の強度や正確性も考慮するとシステム的に視覚的短期記憶を改善できるのではないかと考えました。

そこから、錐体と桿体の光情報の処理バイアスを測定する特性情報収集方法と装置を考案して特許化しました。CRIS®︎として商標登録した特許群です。視覚という感覚貯蔵にまずターゲットを当てたプログラムを用意します。

そして、この特許技術の活用により、視覚や味覚、聴覚などの感覚貯蔵の情報の質を改善して、特に視覚的短期記憶の維持リハーサルの機能化を目指してプログラム開発を行いました。

その結果、全ての方が視覚的短期記憶が改善したわけではありませんが、かなりの高確率で改善しています。当然光情報処理だけでは記憶が絡むのでうまくいきません。その他のプログラムも併せて行う必要がありますが、マッチングすれば視覚的短期記憶も改善することを見つけられたのは大きかったですね。改善を諦めてはもったいないですね。

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