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子ども時代の食事の大切さ

幼少期時代の食事の大切さは、皆さんご存じだと思います。しかし、発達に課題のある方のご相談に乗っていると、やはりお魚の摂取量が少ないと感じることが多くあります。子どもが嫌がって食べないということもあると思いますが、すべてのお魚を食べられないわけではないのですが、嫌いと決めてしまって、あきらめておられる場合も多いです。

 

なぜお魚にこだわるかというと、お魚に含まれる魚油には長鎖多価不飽和脂肪酸が多く含まれているからです。これは、ドコサヘキサエン酸とエイコサペンタエン酸をという重要な構成要素を含んでいるからです。一般的には、長鎖多価不飽和脂肪酸はオメガ3、ドコサヘキサエン酸はDHA、エイコサペンタエン酸はEPAと表記されています。健康食品コーナーにもこのような表示で販売されているのをよく見られると思います。

 

このお魚に含まれる脂肪酸は血中濃度が低くなると、かんしゃくや問題行動を起こしやすいことが、犯罪学の世界では昔から指摘されてきました。母親の妊娠中にお魚をよく食べると7歳の時点で向社会的な行動をとる子供の割合が多く、食べない母親からは反社会的行動を取る子どもが多いことも指摘されています。私も20年ほど前からお魚関係の欧米の研究が気になり、英国まで研究者に会いに行き、詳しく説明を受けてきました。その後、現在まで実践経験でもデータを取っていましたが、同じような傾向が日本でも認められました。


このオメガ3は、神経突起に刺激を与えて、伸長をさせてくれることがわかっていますし、神経伝達物質のドーパミンとセロトニンを調整してくれます。非行などを起こしてしまう方たちの中には、これらの神経伝達物質のバランスが悪い方が多いことが犯罪学で指摘されています。私の実践でもセロトニンとドーパミンだけではありませんが、個別ニーズに応じて仮説を立てて、食事指導を行うと、攻撃性が減少したり、記憶や学習能力が改善されることも多く見られました。


特にDHAなどは、遺伝子の発現の調整を行う要因になっていることも指摘されています。かんしゃくや攻撃行動が減少するケースも多く認められましたので、オメガ3が発達に課題を抱える子どもたちにも効果的な戦略のひとつとして捉えてもよいと思います。とくに、幼少期の脳が急激に発達する時期にはお魚を食べることを少しでも気にしていただければよいと思います。


また、当然オメガ3だけで、全部の効果を説明することはできません。マクロ栄養素とミクロ栄養素の問題も影響しています。マクロ栄養素は、炭水化物、脂肪、タンパク質と捉えてください。ミクロ栄養素は、ビタミンや鉄、亜鉛などの1日に摂取すべき量の少ない栄養素です。


実は、私も長い間、このマクロとミクロ栄養素に注目して、プログラムを提供してきましたが、発達に課題のある方々は、やはりどちらにも問題があることが多かったですね。


ここまで読まれて、もし栄養素が足らないからそれを摂取したらいいのでしょうと思われる方もおられるかも知れませんが、サプリで摂取すれば良いという問題ではありません。バイオアベイラビリティというものがあるからです。同量のミクロ栄養素を摂取しても個々人によって脳に働きかける程度は大幅に異なることがわかっています。遺伝要因と環境要因の両方から影響を受けます。食べれば良いものという単純なものではないことを知っていただければと思います。


実際に、弊社のクライアントさんは日本でも寒い地域に行くほど、ミクロ栄養素の問題が出ることが多いですね。一緒にプログラムに関わってくださっている医師の方も驚くようなミクロ栄養素のデータが出てくるケースも多いですね。


お魚だけでなく、マクロ、ミクロ栄養素もプログラムのターゲットになるところです。これの効果的な改善プログラムを作るために、薫化舎では特許技術を持っています。プログラム実施後の正の効果を見ていると、おそらく遺伝子に何らかの影響を与えて、バイオアベイラビリティに対しても有効的であると考えています。


このように、非行や発達に課題のある方は、食事の問題を軽く捉えてはもったいないと思います。日本人は日本食が遺伝や環境要因的にもプラスになることが言えると思いますし、子どもの頃からお魚やバランスの良い食事をとれば、大人になってからバランスのとれた健康的な身体だけでなく、認知能力も良好に維持できると思います。少し内緒のお話ですが、私は現在でも犯罪などの更生プログラムを実施していますが、薬物依存や中毒の方でも子どもの時に良い食事を取られていた方は、改善しやすいですね。これは、長年の私の経験なので、あまり参考にならないかも知れませんが、あえて書かせていただきました。


子ども時代のお食事を大切にしていただければ、嬉しく思います。成人してからでも大丈夫ですが、早いに越したことはないと思います。



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