発達に課題のある子どもを持つと将来への漠然とした不安が頭によぎる事が多くあります。自立して本人なりに幸せに生きていけるのか?非行や犯罪に巻き込まれないか?人様に迷惑をかけてしまうのではないか?などの悩みが私にも多くありました。
私には発達に課題のある大変な息子がいたので、一般的な非行や社会不適応などに陥ってしまうリスクファクター(以下、リスク要因)だけでなく、発達障害や発達上の課題特有のリスク要因が気になっていました。
ここで言うリスク要因は、変化させる事の可能な要因で、介入によってこれらのリスクをコントロールできるという概念です。変えることのできないまたはできにくい要因は、リスクマーカーといって区別されます。
具体的にリスク要因というのは、年齢によっても異なりますが、この要因があれば将来非行や社会不適応になる確率が高くなるというものです。それぞれの要因ごとに影響度も異なります。
例えば、12歳未満での個人の領域では、喫煙、衝動性、攻撃性、嘘をつく、多動、学業不振、学習障害などもリスク要因として指摘されています。また、12歳未満で学習障害を認識させること、などのリスク要因も指摘されており、早く自覚させて受け入れるようにした方が良いという一般的な心理学や社会福祉的な言説とは少し異なることもあります。犯罪学は数的なデータ(確率)を基準にしてリスク要因を特定するので違いが出るのだと思います。
また、リスク要因には、学校や家庭、地域社会、友人関係などもリスク領域としてあります。学校経営の曖昧さや反社会的な保護者、両親の不仲などもリスク要因としてあります。社会的な繋がりの弱さなどもあり、地域から孤立していることも問題です。
12歳を超えていくと、不良交友、反社会的な集団との関わりなどの仲間の問題や地域との繋がりの問題など社会的要因もリスクの影響度が高くなっていくので、要注意ですね。ネットでの関係も同様ですので、ネット対策のリスクコントロールも重要と言えます。
発達障害や課題のある方のリスク要因として影響度の高いものは、学業不振が指摘されます。定型の方でも学業不振はリスク要因ですが、学習障害などがあると学年が上がるごとに、リスクは上昇していきます。中学生くらいになるとこれに加えて、不良交友などの問題の方が大きくなりますが、学業不振が不良交友の背後に隠れています。
ここで、知能の高さなどの保護要因があることや適切な介入(リスクコントロール)がなされるとリスクは減少していきます。保護者が不良交友を予防したり、環境を変えて、学業不振の対策を強化することなどのリスクコントロールを行えば、リスクは減少します。
加えて、合理的配慮などもリスクコントロールとしては、機能させやすい制度ですが、合わせて学習能力への介入も行う必要があり制度だけの配置だけでは限界もあります。
また、発達に課題があると、社会的失敗の連続や感情の損傷、自尊心の低下、差別的待遇の連続などの特有のリスク要因が指摘されています。
例えば、社会的失敗は、視覚認知能力が弱いことから、ソーシャルキューなどの人の表情や合図を正確に読み取れず、場に合わない行動をとってしまい、非難されたり、疎外されたりして、対人関係が不安定になり、攻撃性を高めて問題行動へと繋がりやすくなります。
感情の損傷は、感情統制の問題があるために、攻撃行動へと繋がりやすく、保護者や教師からの指導のストレスに晒されることによって感情が傷つき、加えて学業不振へと繋がり、不適応リスクが上昇していきます。特に「強化ー結果ー罰」という環境フィードバックに対する反応が弱い特徴がありますので、罰の与え方によっては、ますます悪化していく可能性が高くなります。結果として自尊心の低下が起こり、リスクが増大していきます。指導の仕方をリスクコントロールの視点から変えていく必要があります。
差別的待遇の連続は、発達に課題のある方は、行動抑制が難しかったり、社会的失敗により、体罰、停学、退学を受ける確率が高くなることが指摘されています。警察に逮捕される確率だけでなく、不必要に反発して主犯とされやすい傾向があります。その結果、大人や公的機関、警察などに不信感を抱いて、反社会的、非社会的な態度をとるリスクが上がります。
このように発達に課題のある方のリスク要因はとても複雑で専門的な対応が重要となります。ですので、リスクコントロールや介入は、彼らの全てのニーズ(リスク)をターゲットとして行う必要があります。学業、学習能力、対人関係など広い範囲でのリスクが派生しますので、医師、心理士、精神の専門家、教師などがプログラム上で連携したマルチモーダル的介入が必要になります。マルチモーダル的介入は、リスク要因や反社会的行動を劇的に減少させることが指摘されています。
薫化舎のプログラムは、マルチモーダルインターベンションシステム®︎というサービスが基本ですが、このようなリスクコントロールをバックに配置しながら、学習能力の改善や生活能力、自己コントロール能力、健康管理能力、などの総合的能力の育成と能力開発を同時に行うものとなっています。ですので、発達に課題があっても、反社会的行動があっても、国家公務員や上場企業などの正社員としてライフコースを歩んでいけるようになるのです。
現実的には、このようなリスク要因やリスクコントロールを知らないために、悪化させてしまうことの方が多いので、注意が必要ですね。悪化させてからこちらに来られると、プログラムの配置数や時間がかかってしまいます。本人なりのバイアスのある思考パターンが作られているからです。ですので、刑事上、民事上の問題を処理する間に、膨大な時間と費用が無駄にかかってしまうことが、現実に起こります。
リスク要因を知って、それをコントロールすることの大切さをご理解していただければ、不幸も減少しますので、発達に課題のある子の親としても知っていただければ嬉しく思います。
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